エンハンスメントとトリートメント|宝石の人工処理について
当店は天然石を扱っていますが、宝石は扱っていません。
しかし、ルビーを使用したブレスレットをデザインしたのでエンハンスメントとトリートメントについてご紹介しようと思いました。
宝石の定義は”希少性が高くて美しい外観をもち、モース硬度が7よりも高い天然鉱物”となります。
宝石は石英に負けてはいけない
”モース硬度が7よりも高い”というのが具体的で面白いですね。
普段の生活の中でどうしても砂埃を浴びてしまうものです。あまり意識することはありませんが、かなり浴びているのだと思います。
自動車のボディなどはどんなに丁寧に乗っていても必ず細かい傷が付きますが、これは砂埃に含まれる石英の影響が大きいのでしょう。
石英のモース硬度は7です。かなり硬いです!
ありふれたこの石英を浴びて傷ついてしまうようでは宝石とはいえない、ということですね。
宝石たるものいつまでもその美しさを維持しなければいけない宿命ということです。厳しい世界ですね。
エンハンスメントとトリートメントについて
話しを戻しまして、エンハンスメントとトリートメントという言葉を目にしたことはありますでしょうか。
高価な天然石を物色しているときに目にする機会があると思います。どちらも”人工処理が施されています”ということを示しています。
「人の手が加わっているということは”天然石”じゃないからダメ!」と考えてしまいがちですが、宝石の世界では一般的です。
細かい説明をすると本当に細かくなってしまって、何を言ってるのか分からなくなってくるのでざっくりと説明しますね。
エンハンスメントは石の美しさの可能性を引き出す処理
エンハンスメントの代表は”ヒート・エンハンスメント”です。加熱処理ですね。
クリリンがナメック星の長老に潜在的な才能を引き出してもらってパワーアップしました(唐突にドラゴンボールを例に出してみました)
要するに、その石の美しさの可能性・才能を引き出す処理がエンハンスメントです。
もっと言うと、条件が整っていれば自然界でも到達したであろう”美”へと、人の手で到達させることを言います。
代表例はルビーでしょう。
透明感があり発色のよいルビー。宝石の女王ですね。ほとんどの場合エンハンスメントの処理が施されていると思います。
エンハンスメントの処理が施されていても、それは本来の美しさを引き出しているだけなので「天然色」となります。
人工的な処理が施されていますが”天然色”と言っても良いわけです。
(時代と共に考え方が変化するので、いずれエンハンスメントの処理であっても天然色と言ってはいけないようになるかもしれません)
トリートメントは人の手であらたな美を与える処理
お察しのとおり、トリートメントとはその石に人の手であらたな可能性・才能を与え、それにより美しさ”つくり上げる”ことを指します。
一番分かりやすいのが染色ですね。違う色に塗り替えてしまうわけですから。
処理方法はいろいろありますが、どれも”つくり上げる”処理となります。
石の価値はエンハンスメントの方が上?
多くの方は「トリートメントよりエンハンスメントの方が上、価値が高い」と思うはずです。
結論を言ってしまうと、宝石の世界ではどちらも同じ”一般的なもの”として受け入れられているようです。
日本では”エンハンスメントは石の魅力を引き出す処理なので天然の美しさの延長上にある。だから価値が高い”という考え方が一般的だったのですが、今は違うようです。
世界標準としては”どちらも人工処理である。だからどちらも同じである”となり、日本でもその考えが一般的になってきているようです。
パワーストーンとして見た場合はどうなのか
人によって考え方が違うと思いますが、私の考えは「できれば天然がベスト。エンハンスメントでもしかたないが、トリートメントは論外」です。
パワーストーンと宝石は同じ”石”ですが、石に対する想い入れといいますか、込める想いはまったく違うと思います。
宝石は「美しさ・優越感」といった感じで持っていることに価値を見い出す傾向にありますが、パワーストーンは想いを込めるものであり、願いを叶えようという気持ちを込めています。
そもそもの目的や期待することが違うので、エンハンスメントとトリートメントに対する考え方は宝石のそれとは異なって当然だと思います。
高価な宝石を買うときは、エンハンスメントやトリートメントといった処理に関してよく確認し、納得できたものを選ぶようにしてくださいね。
天然石の客観的な評価・採点の方法を模索する(2/2)
■前編はこちら
天然石の客観的な評価・採点の方法を模索する(1/2)
パワーストーン(天然石)は直感で選ぶべきだと思います。
頭であれこれ考えても答えは出ません。それよりも「身につけたい」「手にしたい」という想いの方が圧倒的に大切だと思います。
とはいえ、ある程度評価できる目を養うのも必要ですね。
今回は後編です。具体的に見ていきましょう。
天然石の客観的な評価「色」
もっとも分かりやすいですね。「見た目」ですから。
すべての石に当てはまるわけではありませんが、基本的には「色は濃くなるにつれて評価は上がっていく」となります。
しかし、濃くなればなるほど黒色に近づいていきますよね。濃ければよいというわけではない、ということです。
その石の色。その色がもっとも美しく表現されている濃さ。その濃さを頂点として評価されます。
薄い色から濃くなるにつれて評価は上がっていき、頂点に到達し、さらに濃くなっていけば評価は下がっていきます。
薄過ぎてあまり評価がよくない場合と、濃すぎてあまり評価がよくない場合。どちらが評価が高いのでしょうか。
これはもう好みの問題になります。客観的な評価で言えば”同じ価値”になるでしょう。
天然石の客観的な評価「内包物(インクルージョン)」
天然石の場合、内包物(インクルージョン)は切っても切れない関係になります。
内包物をひとことで説明すると「石の主成分とは異なる物質」のことです。
内包物がまったくない完璧な石が最高の評価となります。宝石の部類になってくるでしょうね。
内包物が増えればそれだけ評価は下がっていくのが基本です。しかし、天然石と内包物は切っても切れない関係です。内包物がまったくないものを探すのは極めて難しいです。
それに、内包物があるからこそ天然の魅力を感じることができます。内包物がまったくなければガラス玉のような雰囲気になりますから。
内包物ありきで”美しい”と思える個体かどうか。
それが評価基準になってくると思います。
天然石の客観的な評価「輝き・艶」
ピカピカ光っているような輝きというより、艶っぽい魅力のある輝きです。
石によって輝き具合・艶っぽさの基準は違いますので、ある程度”見慣れる”ことが必要だとは思います。
慣れてくると、パッと見たとき「いい輝きだな」「艶っぽさがあって素敵だな」という感想を持ったりすることができると思います。
やっぱり直感・第一印象がもっとも大切
前述した内容はすべての石に当てはまるのではなく、あくまでも”一般論”です。
一応これらの内容を頭に入れておけば天然石との接し方も変わってくるのでは、と思います。
とはいえ、私はパワーストーン(天然石)は直感・第一印象がもっとも大切だと信じています。
どんなに発色が良く、内包物もなく、輝き・艶も素晴らしくても、魅力を感じなければ「価値ある存在」にはならないと思います。
宝石に関しては”高額なものを身につけることに価値がある”という考え方も成り立つとは思います。
しかし、パワーストーンは宝石ではありません。まったく違うジャンルになります。
想い・願いを込めるもの。それがパワーストーンです。
なので、まずはあなた自身の「これが好き♪」「身につけたい♪」という想いこそが大切だと思います。
パワーストーン、天然石の世界は知れば知るほど奥深いです。
完璧にマスターすることはできないほどの奥深い世界だからこそ、言葉では表現できない魅力を感じます。
これからも一緒にパワーストーンの魅力に触れていきましょう♪
天然石の客観的な評価・採点の方法を模索する(1/2)
ご存知の方も多いと思いますが、天然石たちの価値・品質(グレード)を決める客観的で絶対的な基準は存在していません。
ダイヤモンドは”鑑定”なので基準がありますが、その他の石はすべて”鑑別”になるため価値や品質(グレード)を定めることはできません。
詳しくは『パワーストーン・天然石の品質|グレード(AAA等)の落とし穴をご覧ください。』
パワーストーンブレスレットには美し天然石たちが使用されますが、これらの価値・品質(グレード)を客観的に採点することは不可能なのでしょうか。
色石たち(ルビー、サファイア、オパールなど)、宝石と聞いて思い浮かべるような石たちには一応の基準があります。
細かい項目があって、それぞれに採点します。万国共通の採点基準として確立するために努力しています。
しかし、パワーストーンと聞いて思い浮かべるような天然石たちはそうはいきません。万国共通の基準がないので、誰もが自由に適当に価値・品質(グレード)を決めれます。
いわゆる「当店の基準では・・・」というやつです。
こうなると何がなんだか分からなくなってしまうので、自分なりにできる”客観的な評価”の方法を模索してみましょう。
長くなりそうなので、2回に分けて書いていこうと思います。
好み・インスピレーションに”客観的な評価”を加えることで採点する
「好み」や「インスピレーション」と言ってしまった時点で客観的な採点は不可能ということです。
・・・と言ってしまうと何も進まないので、ここはひとつ”客観的な評価”を加えて採点する努力をしてみましょう♪
客観的な評価として3つの項目があります。
- 色
- 内包物
- 輝き
です。
自分の中の”適正価格”を定めるために必要な考え方です
A店とB店にそれぞれローズクォーツがあったとしましょう。どちらもとても綺麗ですが、よく見ると少々違いがあります。
どうやら若干の価格差もあるようです。
さて、どちらのお店のローズクォーツが”良い”でしょうか。
前述したように”客観的な基準”は存在していないので、この問いに対する答えはありません。数学のような”答え”はありません。
しかし、自分にとっての”答え”は見出せるはずです。自分にとってどちらのお店のローズクォーツがお買い得なのか、冷静に考えてみましょう。
結局のところ”経験・慣れ”が必要です
当たり前の話ですが、普段から天然石と触れ合っていなければなかなか採点・評価をすることは難しいです。
まずは天然石を販売しているお店に立ち寄って、見て・触れて、石たちと親しくなってください♪
まずはそこからスタートです。
さて、次回は具体的な”客観的な評価・採点の方法”を詳しく書いていきますね。
天然石の代表的な採掘方法|過酷な採掘現場
今回は、何となくイメージはできるけどあまり詳しくは知らない”天然石の採掘方法”に関して書こうと思います。
採掘方法はいろいろあるのですが、鉱山や採掘する石、立地などなどによって最適な方法で行われます。
世界的に有名な鉱山や、良質な宝石の原石が採れる鉱山では、採掘現場のすぐ近くに村があって、そこで多くの人が生活しています。
”村”という表現だと小規模の集落をイメージされるかもしれませんが、場所によっては数十万人という規模の村があったりします。もはや”街”ですね。
こうした人々のおかげで、美しい宝石・天然石に触れることができるわけです。
では、採掘方法はどのような種類があるのでしょうか。
代表的なものをご紹介します。
水圧式
柔らかい土が積み重なっている層から採掘する場合は水圧式という方法が用いられます。
大量の水を浴びせて泥の池のような状態にし、ポンプで泥ごと一気に吸い上げていきます。
水や土砂を取り除くためのフィルターにぶちまけて、フィルター上に残ったものから原石を探す方法です。
ダイナマイト式
硬い岩盤を深く掘り進まなければいけない場合はダイナマイト式という方法が用いられます。
イメージとおり、ドーンと爆発させるわけです。
硬い岩盤を200~400mといった深さまで掘り進めるため、ダイナマイトで岩盤を砕き、砕いた岩盤を地上に運び・・・を繰り返していきます。
言うまでもなくとても危険な作業ですし、岩盤を運ぶ作業は超重労働です。
露天掘り
河川の近くなどの水田付近では露天掘りという方法が用いられます。
井戸を掘る感じで10~30mほど掘り進みます。粘土層まで到達したら、横へ掘り進めていきます。
ポンプで常に水と土砂を吸い上げていき、土砂の中から原石を探します。
川掘り・土地掘り
シンプルに、川底や土地を掘り返えし原石を見つける方法です。
機械で大規模に行うのが基本ですが、個人で地道に掘って探すケースも多々あります。
一攫千金を狙った人たちでごったがえしている鉱山もあったりします。
当たり前ですが、勝手に採掘することはできません
鉱山へふらっと立ち寄って汗を流しながらせっせと採掘・・・はできません。当たり前ですね。
現地の人々の大切な収入源であり、場所によっては唯一の産業だったりします。
現地の人々から直接原石を買い付ける、場所によっては可能で、場所によっては不可能です。権利関係に厳しい場所も多いので。
私は鉱山の雰囲気は大好きです。なんていいますか「地球で生活してるんだ」ということを肌で感じることができる場所という感じがします。
美しい宝石や天然石・パワーストーンを楽しめるのは、鉱山で働く人々のおかげということを忘れず、感謝しながら大切に扱っていきたいですね♪
宝石(色石)の1カラットあたりの輸入原価|ランクの違い
今回は宝石に関する内容を書いてみようと思います。
ずばり”1カラットあたりの輸入原価は、ランクの違いでどれくらい差があるものなのか”です。
宝石(色石)のランクとは?
「色石(いろいし)」とは、色のついた宝石です。ルビーやサファイア、エメラルド、オパール、翡翠(ヒスイ)などですね。
同じくらいの大きさなのに価格がまったく違うことってありますよね。
大きなショッピングモールなどに行くと天然石屋さんがあったりしますが、ガラスケースに入ってる石たちはすごく高いです。同じくらいの大きさなのに、です。
ランクが高いからですね。言い換えると、”高品質”というわけです。
さらに正しい表現としては”希少性”となるでしょう。高品質であっても希少性がないのなら安価ですからね。
財産的な価値があるのは全体の10%?
たとえば世界中からルビーを集めたとします。
90%はCクラス以下になります。アクセサリーなどに気軽に用いることができるランクです。正真正銘本物のルビーですが、財産的な価値はありません。
残りの10%は財産的な価値があるのかというと、そういうわけでもありません。10%の中から、今度は人の手が加わって財産的な価値があるルビーへとなっていくわけです。
10%の中でごくごく僅か、100万個に1個だけくらいのごくごく僅かがAクラスとなります。
Aクラスのさらに上、超特級と呼ばれるクラスになると、ほぼ0%です。確率で言えば0%。発見されない!と言ってしまっても間違いではないほどの希少性となります。
宝石(色石)の1カラットあたりの輸入原価
では、1カラットあたりの輸入原価はどんな感じでしょうか。
たとえば、あなたが産地から直接、1カラットのルビーを仕入れるとしましょう。中間マージンのない”原価”ですね。
Cクラスだと5~20万円ほどでしょう。けっこう幅がありますね。
Bクラスだと20~60万円ほど。
Aクラスだと60~100万円、特級クラスだと100~200万円。
そして、超特級クラスになると200~600万円が相場だといわれています。
同じ1カラットのルビーでも、5万円~600万円という幅があるわけですね。
他の色石たちもルビーほどではないにしても、数万~数百万円の幅があります。
高額であれば高ランク?いいえ、違います
前述したのは”原価”ですので、高額であればあるほど高ランクです。というより、高ランクだから高額です。
では、たとえば1カラットのルビーの指輪があったとして、200万円の販売価格だとしましょう。
200万円なのですから高ランクであると期待しますね。Aクラスに該当するルビーなら嬉しいですが、残念ながら…おそらくBとCのちょうど間くらいのクラスに該当するルビーでしょう。
問屋が間に何社入っているかで販売価格は大きく変わってきます。ものすごい変わります。場合によると倍くらいの差がでます。
なので、高額だから高ランクとはいえません。
何社もの問屋と経由したCクラスのルビーと、問屋を経由しないBクラスのルビーなら、後者のルビーの方が販売価格は安くなると思います。
百貨店で販売されているものは、基本的に複数の問屋を経由しているので高額です。まさに百貨店価格です。
まったく同じものを問屋を介さずに手に入れることができれば、半額未満の価格になるでしょう。もっと安くなるかもしれません。
ただし、しっかり鑑別できる目があればの話です。
信頼できるお店で買うのが一番
パワーストーンのブレスレットも、信頼できるお店で買うのが一番です。
本来であれば5,000円で販売するのが妥当なものを20,000円で販売しているお店があったり、たとえば濁った水晶をアゼツライトを偽って高額で販売しているお店があったり、といろいろあるからです。
宝石ではない天然石たちでさえこれです。
何十万円、何百万円といった高額な宝石の世界になってくると、ひとつのトラブルが大きな大きな問題へと発展していくでしょう。
だからこそ、信頼できるお店で買うのが一番です。高くても百貨店で買う、もしくは有名ブランドの直営店で買うのが一番でしょう♪